アラフォーの私⑳

◇夢から覚めて◇

半年前の私に戻っていく私を見ながら、彼はしばらく黙って座っていた。私はもう顔を上げることもできなかった。―― 独りになりたい ―― 私の心の声が聞こえたのか、彼は、「出かけてくる。」と部屋を出て行った。もう誰にも頼ることができなくなった。というより、もし彼に頼った場合、それはどういうことを意味するのか。。。私にはそれだけの覚悟は無かった。どこから先が不倫なのだろうか?私の彼に対する思いは、家族を捨ててまでも求めたい真剣なものではなく、浮かれた恋心、久しぶりに訪れた青春、非日常に心がときめいていただけみたいなものだった。答えは出ていた。本来の位置に戻ろう。心の中で彼にさよならをした。

アラフォーの私⑲

◇到着◇

どこをどう歩いていたのか、周りは全く目に入る状態でもなく、独りよがりに話し続けていた私。「着いたよ」と、言う彼の言葉に、ふと我に返る。着いたのは、落ち着いた京都情緒たっぷりの旅館。私の為に用意してくれた彼の配慮を忘れてはいないが、嬉しさより苦悩が断然勝っている。もしあの時、私よりも夫の方が先に私達に気付いていたとしたらどうなっていたのだろう。。。?考えただけで、ゾッとする。私は夫との生活、子供達との今の生活を壊したくないことに気付いた。でも、その夫は今どこでどうしているのだろう?

あの女と一緒にいるのだろうか?今の私と同じように。

アラフォーの私⑱

◇大混乱の後は。。。◇

いろいろな思いが怒涛のように押し寄せたと同時に、この半年の私はどこかに去って行った。夫の姿を見た瞬間から、彼との楽しい時間がうそのように吹っ飛んでしまった。時間が経つにつれ、尾行すれば良かったと後悔もしたが、尾行したところでどうだというのだろう?自分も浮気真っ只中ではないか?彼に話す気力も無くなり、ただ一言、「夫がいた、女と一緒だった。」彼も私のとっさの行動に既に察していた。気まずい空気が流れる。びっくりして、悲しくなった後、だんだん腹もたってきた。宿泊場所へ向かう道々しばらく黙っていたが、夫へのいろいろな思いがこみ上げてきて随分無責任な言葉を彼にぶつけていた。

アラフォーの私⑰

◇大混乱◇

全く予想していなかった事に遭遇してしまった。この時まで、自分のことしか考えていなかったことに気付かされる。自分が彼と一緒にいるのを誰かに見られないようにということしか考えていなかった。まさか、まさか、家の夫に限って私以外の人となんてあり得ない!と当たり前のように思っていた。私は、この半年、夫に無関心だったことにも今さらながら気付いた。あまりにも薄い存在になってしまっていた夫。単身赴任先の浜松から月に2度は帰って来ていた夫、、、そういえば、最近は月に1度帰ってきていただろうか?

では、その間、夫は何をしていたのだろうか?さっきの女と会っていたのだろうか?

アラフォーの私⑯

◇まさかの遭遇◇

目的地、京都へは新幹線で。誰かに見られる可能性を考えると、こちらからドライブをリクエストした方が良かったのかなあとも思ったが、新幹線での道中一つも楽しい時間だった。お昼に到着。見た目もきれいな懐石料理を食べ、観光に。紅葉には少し早い時期だったので、混雑することなくしっとりと京都の庭園、お寺を満喫。彼は歴史に詳しく、京都にも精通。今まで何度となく来た京都だったが、いろんな発見あり、視的にも知的にも満たされ楽しい時間はあっという間に過ぎていった。暗くなってきた八坂神社界隈を祇園に向かい、お店をのぞきながら歩いていた。『あっ!!!』。反射的に体が後ずさり、目先のものから隠れた。いるはずの無い人がいた。夫だった。しかも、夫は1人ではなかった。隣には女性がいた。

アラフォーの私⑮

◇ある方向に動き出した私◇

1ケ月を費やしての私の気持ち、ひっくり返すことの出来ない結論だと分かった。

彼と久々に連絡をとり、一緒に旅行してみたいと伝えてみた。ケータイ向こうの彼は、別段びっくりした風でもなく、「分かった、特にリクエストが無ければ場所決めるけど」と返事が返ってきたので、全ておまかせにした。さて、どこに行くことになるのかな、、、と、気にしながら数日を過ごした。行き先は、京都。さて、行くにあたり、子供たちを両親に何と言ってお願いしよう?いろいろと手はずを整えて出て行く必要があることに気が付いた。不安な気持ちも出てきたが、さぁ準備をするぞという気持ちの方が断然強かった。

アラフォーの私⑭

◇私の出した答え◇

少し時間を置いたほうがいいかもしれない。しばらく会わないことにして、次の約束をせずに別れた。急に張り合いの無い毎日になってしまった。頭の中の理性は、これ以上彼に会い続けることは何を意味するのか、どういう方向に向かっているのかを必死に訴え続けているが、私の心はそれを乗り越えて行こうとするので摩擦が起こっている。苦しくて、ため息が出る。はぁーっ、本当にどうしたらいいのだろう。1ケ月ほどこれ以上無いくらい悩みに悩んだ。ジタバタジタバタ、いろいろな考えが出きった後に出てきた答えが、『彼と一度でいいから一緒に旅行をしたい』。私はバカなのだろうか・・・。

アラフォーの私⑬

◇完全に変わってしまった私◇

何のためらいもなく、次会う約束をとり、数日がたった。約束の日までは、まだ10日以上ある。前以上にその日が待ち遠しい・・・。日常生活のことが出来なくなりそうな浮ついた気持ち?を押さえながら家事をする。

当日、やはりあっという間に時間は過ぎる。そして、次に会う日を決める。月に2回くらいのペースで会い、半年がたっていた。彼に会うのがすっかり生活の一部分になっているが、このままでいいのだろうか、という思いが頭をよぎり始めた。楽しさと共に、苦悩がじわじわと出てくる。彼にも私のそんな思いが伝わった。「君はどうしたいんだい?」という言葉が返ってきた。そうなのだ、最後は私が自分の心を決めなくてはいけない。

アラフォーの私⑫

◇してはいけない比較◇

本当に美味しいランチだった。話も弾みあっという間に時間が過ぎた。

中学生時代には知り得なかった彼の魅力、長所を沢山発見した。趣味は旅行、特に海外旅行でいろんな人に出会うことが好きと聞き、旅行好きの私は大共感、彼と一緒に旅行できたら楽しいだろうなと想像していた。

それに比べて、夫はどちらかと言うと旅行に関しては消極的。サービス精神も最近は感じられなくなってしまった。再会した初恋の彼が、とってもジェントルマンに見えてしまう一方で、夫が私によって魅力無い人物になってしまった。始めたら止まらない禁断の比較。

アラフォーの私⑪

◇ジェントルマンになっていた彼◇

10日後の約束の日が待ち遠しかった。自然と鼻歌が出てしまう。娘に、「お母さん、何かいいことあったの?」と聞かれ、ドキリとした。私に変化の兆しが見えるらしい。

当日、初デートに行くかのような気持ち。こんな気持ち何年ぶりだろう?いや、何十年ぶりだろう?人間って、気持ち一つで細胞が若返り元気になれるのかもしれない。

約束のお店は、洒落たフレンチレストラン。オーダーを済ませ、席をとっている彼の姿があった。「このお店のシェフはフランス帰りで、お肉がとびきり柔らかくておいしいんだよ。デザートも楽しみにしてなよ」。ドラマで聞いたことのあるようなセリフだけど、現実に目の前で展開されると、ものすごく特別感だ。思えば、女友達とフルコースのイタリアンやフレンチを食べに行くことはあっても、夫とは何回行ったことがあっただろうか?